WORK / AI公開日 · 2026-10-23
Personal Notes

記憶することを諦めたら、AIで仕事が楽になった話

大量の案件を扱うなかで、私は細かな経緯や条件を全部覚えることを諦めた。代わりに整えたのは、必要なときに過去の議論や資料へ戻れる仕組みだ。Linearに案件の状態と関連リンクを残し、AIに判断材料を整理させる。この分担にしてから、仕事を再開するたびに一から思い出す負担が減った。

全部を覚えるには、条件が多すぎる

会社ではAmazon・楽天・自社ECのマーケティングや販売管理、分析、施策立案を担当している。受注・配送のフロー構築、集計や経理の照合、自動化、顧客対応、メンバーからの相談、コンプライアンス対応もある。

領域が広がると、仕事の量に加えて、覚えておく条件が増える。同じ商品でも、販売経路によって配送や決済、返品の条件が違う。そこに社内ルールや過去の指摘が重なる。「どの条件なら、どのルールを使うか」まで把握しなければならず、その条件も更新される。

私には、それをすべて頭の中に置いておくのは難しかった。

ただ、数か月前の案件でも、当時の資料や議論を見れば背景は思い出せる。細かな数字を何も見ずに再現するのは苦手でも、情報がそろえば、矛盾や優先順位、次にするべきことは考えられる。自分にとって、情報を覚えておくことと、出てきた情報を評価することは別なのだ。

それなら、忘れないように頑張るより、判断に必要な情報を取り出せるようにした方が仕事は進めやすい。

覚える負担を、戻れる仕組みへ
覚える負担を、戻れる仕組みへ(クリックで拡大)

Linearに「過去の自分への入口」を残す

この考え方が形になったのが、Linearの使い方だった。以前はAIで自作した管理画面も使っていたが、案件と状態を整理する用途では、Linearを使うようになった。

思いついた案はBacklogへ置き、保留する案件には進められない理由と再開の手がかりを残す。完了した案件も消さず、経緯と成果を後から見返せるようにする。各案件には目的、確認事項、次の作業とともに、元のチャットや成果物へのリンクを入れている。

進行中・レビュー待ち・Backlog・完了など、状態別に並べた実際の案件一覧
進行中・レビュー待ち・Backlog・完了など、状態別に並べた実際の案件一覧(クリックで拡大)

特に助かるのが元スレッドへのリンクだ。複数のチャットで相談を進めていると、数週間後には「あの話、どこでしたっけ」となる。案件から元の会話へ戻れれば、そのスレッドで進捗を確かめ、途中から考え直せる。

元スレッドへのリンク、目的、確認項目を一つの案件にまとめた実際の詳細画面
元スレッドへのリンク、目的、確認項目を一つの案件にまとめた実際の詳細画面(クリックで拡大)

資料やスプレッドシートも同じで、作ったことだけ覚えていても、所在を探し直すのは面倒だ。だから案件に保存先を結びつける。Linearは、私にとって過去の議論・判断・成果物へ戻るための索引になった。

案件を入口に、必要な情報へ戻る
案件を入口に、必要な情報へ戻る(クリックで拡大)

すべてをLinearに保存しているわけではない。詳しい判断基準や知識は参照用のデータベースや資料に、原稿・集計・コードはそれぞれの保存先に置く。Linearには、その仕事が今どこにあり、何を見れば再開できるのかを残している。

AIに材料を整えてもらい、自分は判断する

仕事中には、質問やレビュー、例外対応が次々に届く。以前は一件ごとに資料を探し、細かな条件を読み直していた。今はAIに背景や過去の判断基準を整理させ、それを見ながら対応を考えることが増えた。

情報が足りなければ追加で確認し、おかしければ指摘する。問題がなければ次へ進める。感覚としては、次々飛んでくるボールを打ち返しているようなものだ。その結果をまた外に残すので、次に同じ話が来ても記憶だけを頼りにしなくてよい。

案件の状態はLinear、参照する材料の整理はAI、目的や優先順位、採否の判断は私。役割を分けたことで、その場の判断に頭を使いやすくなった。

忘れても、途中から再開できる
忘れても、途中から再開できる(クリックで拡大)

数か月後にBacklogを見て「これ、やりたかったんだ」と思えば、記録から戻れる。終わった案件について聞かれても、経緯と成果物をたどれる。欲しかったのは、忘れた自分でも仕事を再開できる状態だった。

記録は、戻ったときに使えてこそ役に立つ

この分担にしてから、私の実感では、対応する業務や作る成果物の幅が広がった一方、頭の負担やストレスは減っている。改善の程度をすべて数値で測っているわけではないが、「扱う仕事が増えるほど、覚えられる人間にならなければ」という負担は薄れた。

ただし、残した記録が古ければ、戻っても判断を間違える。案件の状態と実態がずれたり、リンク先の資料が更新されなかったりすることもある。AIが取り出した内容も、今の条件に合うとは限らない。重要な判断では正本と更新日を確かめ、法令や規約に関わる内容は最新の資料へ戻る必要がある。

自分が多くの案件を扱えるようになることと、自分一人に責任を集めることも分けて考えたい。経緯や成果物を残すなら、他の人が引き継ぐときにも分かる記録を目指したいと思っている。

次の自分が、迷わず続きを始められるように

私は、詳細を覚えるのが得意になったわけではない。案件の状態、元の議論、判断の根拠、成果物への入口をつないで、覚えていなくても続きを始められるようにした。

AIに情報を整理させても、何を採用するかは自分で決める。そのための材料を探し直す負担が減るだけで、仕事はずいぶん楽になる。

まず一つの案件に、元の会話と成果物のリンク、次にすることを残しておく。次に開いた自分が、どこから手をつければよいか分かる。それが、私にとって記憶を諦めた先に作りたかった働き方だった。