AIで苦手を克服しない。「苦手な仕事」を得意な仕事に変えるという発見
細かな規則を覚えるのは今も苦手だ。それでも、以前は負担だったコンプライアンス対応が、AIを使うようになって取り組みやすくなった。AIが根拠や修正案を整理してくれると、私はそれを比較し、評価するところから始められる。同じ仕事でも、自分が担当する処理を変えれば、得意な能力を使えるのだ。
苦手なままでも、仕事は進めやすくなった
私は面倒なことが嫌いで、できれば同じ確認を何度も繰り返したくない。求められる品質は保ちながら、自分の負荷を減らしたいと思っている。集計や照合を自動化し、過去の判断基準を残してきたのも、そのためだ。
なかでも負担だったのが、商品や広告の表現を確認する仕事だった。関連する法令や社内基準、過去に指摘された表現、商品ごとの注意事項を探し、今回の原稿に当てはめる。細かなルールや例外を大量に覚えるのが苦手な私には、判断にたどり着くまでの作業が重かった。
そこで、過去の指摘や社内の判断基準、推奨表現をデータとして残し、AIが参照できるようにした。原稿を見る際には、関連する基準を取り出し、問題になりそうな箇所と根拠、修正候補を整理してもらう。
材料が並んでいれば、私は「この表現は商品に合うか」「断定しすぎていないか」「修正しても意味は伝わるか」と考えられる。規則を何も見ずに思い出すことは苦手でも、情報を見比べて違和感を見つけ、方向を決めることは比較的得意だと感じている。
事前確認の質や対応速度が上がり、社内審査の指摘も減ってきたという実感がある。ただ、同じ条件で他の担当者と比較したわけではなく、変化をAIだけの効果だと証明できているわけでもない。確かに言えるのは、自分の負担だった工程が変わったことだ。

AIが、判断を始められる形に整えている
以前は、規則を探す、条件を整理する、原稿に適用する、判断する、という流れを自分で進めていた。今は、前半の作業をAIに任せている。
原稿と商品情報、確認の目的を渡すと、AIが関連する基準や過去の指摘を取り出す。問題候補、理由、修正案、未確認の事項が整理されたところで、私が採否や追加確認を判断する。結果は残し、次に使える判断基準へ反映する。
AIが間に入ったことで、苦手な情報整理から始めていた仕事を、得意な比較・評価から始められるようになった。 記憶力が変わらなくても、仕事の進め方を変えれば、使う能力の配分は変わる。
AIに任せられる工程を探すとき、作業時間だけを見ていると、この変化を見落としやすい。私の場合は、調べて整理する時間の短縮に加え、苦手な工程を通り抜けてからでないと判断できない、という負担が減っていた。

もちろん、出てきた案を見れば十分というわけではない。AIが誤った基準を参照したり、問題になり得る表現を見落としたりすることもある。候補を比べるだけでなく、根拠が正しいか、抜けた論点がないかまで確認する必要がある。
得意な処理が違えば、任せ方も変わる
この経験から、AIの使い方を考える順番も変わった。AIのできることを調べるのと同時に、自分がどの工程なら品質を出しやすいのかを考えるようになった。
私には、AIが検索や整理を行い、自分が評価する分担が合っている。けれど、発想や構想が得意な人なら、自分で企画を考え、AIに設計や実装を補助してもらう使い方が合うかもしれない。表現を細かく調整するのが得意なら、下書きをAIに作らせ、仕上げに力を使う方法もある。

これは人を固定的なタイプに分ける話ではない。同じ人でも、仕事や経験によって得意な工程は変わる。どこを任せるかは、実際の成果と負担を見ながら調整するものだと思う。
AIを自分に合わせるというと、口調や過去の会話を覚えさせることが思い浮かぶ。私には、自分の得意・不得意に合わせて担当工程を組み直すことも、それに含まれるように思える。
楽になっても、確認する力は要る
苦手な工程を任せられるとしても、基礎理解まで不要になるわけではない。何が問題なのか分からなければ、AIの説明の誤りや、重要な論点の抜けに気づきにくい。根拠の確認や、必要に応じた担当部署・専門家の審査も残る。
それでも、必要な細部をすべて暗記することと、意味を理解して妥当性を評価することは分けて考えられる。私は後者に時間を使いやすくなったことで、仕事の幅を保ちながら、以前より気持ちが楽になった。
成果物を作る速度が上がり、仕事の進め方を聞かれる機会も増えた。ただし、この分担が誰にでも同じように合うとは限らない。自分が楽になったと感じるだけで終わらせず、成果物や審査結果を見て、品質も保てているかを確かめたい。
克服を目指す前に、工程を分けてみる
苦手な仕事があると、まず自分の能力を鍛えなければと思いがちだ。私も、細かなルールを覚えられないことを、自分の弱点として受け止めていた。
でも、仕事を工程に分ければ、別の進め方が見つかることがある。何が負担なのか、材料がどんな形で出てくれば自分は判断できるのか。その間をAIに手伝ってもらえば、苦手なままでも仕事との相性を変えられるかもしれない。
私に起きたのは、コンプライアンスの知識を一気に覚えたという変化ではない。必要な根拠が並ぶことで、自分の評価や判断を使いやすくなったという変化だ。AIを使っていて面白いのは、こうして自分の能力の使い方まで考え直せるところにある。