UX case study / narrative interactionUX
国家無益機構
観測記録OBSERVATION RECORD / 2C3BD85ARECORDED : 2026-08-17DOMAIN : UX DESIGNSTATUS : ARCHIVED

「何の役にも立たない」を、
最後までやらせる。

架空の国家機構から、なぜか国家最高責任者候補に選ばれる。応募していないのに一次選考は通過し、5つの無益な実技試験を順番に進めさせられる。ネオブルータリズムをベースに、企画、世界観、コピー、UI、実装、公開までを一人で1日でつくった実験的な体験サイトである。

国家無益機構の応募していない閲覧者を候補者に選ぶファーストビュー
最初の一画面で、閲覧者を国家最高責任者候補として勝手に採用する。

説明を読む前に、
すでに試験は始まっている。

このサイトの出発点は「何の役にも立たないことに、全力のUXを与えたら面白いのではないか」というネタである。ただ、文章を読ませるだけでは一度笑って終わる。そこで通知を開いた瞬間に一次選考へ合格させ、ユーザー自身を当事者に変える構造にした。

「辞退方法は、ページを閉じることだけ」というコピー、0/5という進捗、ロックされた次の部署を並べることで、意味がないと理解していても次が気になる状態をつくる。目的達成ではなく、無益な完遂欲そのものをUXにしている。

5つの無益な実技審査を順番に進める体験フロー
一つずつしか開かない直列の工程で、次の無益さへの好奇心を維持する。

無意味な操作であっても、
進捗、禁止、次の予告があれば、人は最後まで行きたくなる。

「押すな」と言い続けて、
押したくさせる。

最初の「押すな庁」は、禁止と誘導を反転させるための部署である。巨大な赤いボタン、過剰な注意書き、押下を防止するための架空の巨額予算。見せる情報すべてを、一つのボタンへ注意を集めるために使った。

押しても、押さなくても人事課へ記録されるという逃げ場のないコピーを置き、禁止違反を次の試験へ進む成功条件へ反転させた。ここではUI部品が物語の小道具であり、クリックが次の展開を呼ぶ。

ネオブルータリズムを、
見た目だけで終わらせない。

太い黒線、原色、ずれた影、巨大な文字というネオブルータリズムの文法を使った。ただし視覚的な引用では終わらせず、「勝手に進める国家機構」という世界観の圧力として使っている。画面の強さが、閲覧者に選択されていない感覚を与える。

各部署で色と画面文法を変えることで、次の試験に入るたびに小さな驚きをつくった。角丸撲滅、AIおわび代行、どうでもいいこと選手権のように、AIやUIで見かける違和感を、説明ではなく操作で笑える形にした。

装飾だけのネオブルータリズム
  • 太線と原色を置くだけ
  • 画面の意味が変わらない
  • 一度見た後の動機が弱い
物語を支えるUI
  • 太線が行政の圧力になる
  • コピーと操作が同じ設定を共有する
  • 部署ごとの変化が次への動機になる

一つの笑いではなく、
完遂する物語をつくる。

01
押すな庁
禁止されるほど押したくなる、最初の反転操作。
02–04
AIの癖と無益な熱量を連続させる
角丸撲滅、AIおわび代行、全国どうでもいいこと選手権で、操作するたびに異なる笑いを置く。
05
最後に離脱を勧める
「閉じてください」と警告しながら、最終人事へ進みたくなる緊張をつくる。
Final
価値0円の肩書で終える
すべての操作を任命理由として回収し、初代・終身無益総理大臣へ強制任命する。

速さは、実装量ではなく
世界観の迷いを消すことで生まれる。

1日で公開まで進められた理由は、機能をたくさん作ったからではない。最初に「国家無益機構」という世界観と、閲覧者を強制参加させる一本の体験を固定したからである。その後のコピー、画面、色、操作は、すべてその設定から判断できた。

AIは実装と制作を加速する。しかし、何を面白がらせるのか、どこで警戒させ、どこで押させるのかは人が決める。AIを使うほど、コンセプトと体験の判断が制作速度を左右する。

ネタは、文章にすると一度で終わる。
操作にすると、
最後までやった記憶になる。

References — 公開サイト

国家無益機構 / National Institute of Absolutely Nothing — 記事内スクリーンショットと体験の参照元。