―"見えない設計資産"を、使える形に変える管理UIという発想―
AIにデザインの方向性を伝える手段として、DESIGN.mdへの注目が高まっている。 発想自体は強い。しかし、実際に触れると「便利そうなのに使いにくい」という違和感が生まれる。 その正体と、解決策としての管理UIについて整理する。
従来、デザインの指示は曖昧になりやすかった。「高級感のある雰囲気で」「もう少し柔らかくしたい」「このブランドっぽくしたい」——こうした言葉は、人間同士でも解釈がぶれやすい。AIに渡すとなると、なおさら不安定になる。
そこで、デザインのルールをあらかじめ構造化し、Markdownとして保持しておく。色・タイポグラフィ・余白・コンポーネントの雰囲気をテキストでまとめておけば、AIに対する指示のブレを大きく減らせる。
DESIGN.mdは、デザインの曖昧さを再利用可能な設計資産に変える仕組みである。
問題は、概念が悪いことではない。問題は運用の仕方にある。
DESIGN.mdはテキストである。内容を読めば意味は分かるが、最終的にどんな雰囲気になるのかが直感的に分からない。
複数のDESIGN.mdが存在しても、意思決定のUIがない。どれが今回の目的に合うかをテキスト同士で比べることは難しい。
複数ブランドや複数トーンを持つ場合、テキストファイルを散在させると再利用しづらい状態になる。
必要なのは、単なるファイル保存ではない。
DESIGN.mdを"見て選べて使える状態"にする管理UIである。
このギャップを埋めるプログラムを実際に作成した。以下のような機能を持たせている。
実際に動作している管理ツールの画面を示す。カード一覧・詳細パネル・DESIGN.md適用プレビューの3つの視点で、テキストでは伝わらないデザイン資産の可視化を確認できる。
63ブランドをカテゴリ別にカード表示。各カードにミニプレビューとカラースウォッチを表示し、一覧から視覚的に選定できる。検索・カテゴリ絞り込み・お気に入りフィルターを備える。
カードをクリックすると右パネルが開き、カラーパレット(hex値コピー可)・DESIGN.md全文・プレビューを確認できる。そのままコピーしてAIに渡せる。
同一のHTMLテンプレートに異なるDESIGN.mdを適用した出力例。内容はそのままに、フォント・カラー・レイアウト感がブランドごとに全く異なる雰囲気に変わる。これがDESIGN.mdを"差し替え可能な設計資産"として扱う利点である。
一見すると、このツールはDESIGN.mdのギャラリーに見える。しかし本質はそこではない。
本当にやっていることは、"見えないデザインルール"を、意思決定できる形に変えることである。
つまりこれは単なるビューワーではなく、ブランドの雰囲気を可視化し、AIに渡す前の確認を容易にし、複数資産を一元管理し、そのまま制作に接続できる——AI時代のデザイン指示ハブに近い位置づけになる。
この仕組みの強さは、単発の便利さではない。
たとえば同じHTMLでも、適用するDESIGN.mdを変えるだけで雰囲気が一気に変わる。未来感のある印象・温かく知的な印象・高級感のある印象——内容を変えずに文章の人格やブランドの空気感を差し替えられる。
従来は、AIに毎回長文でデザイン説明をしていた。管理UIがあれば「これを選ぶ→コピーする→AIに渡す」だけで済む。この差は制作の初速に直結する。
有名ブランドを参考にするだけでなく、自社トーンも登録できる。ブランドルールの蓄積・資料用トーンの保存・過去資産の再利用が可能になる。ここまで来ると、参考集ではなく社内用の簡易デザインシステム管理ツールになる。
この仕組みは、特に以下のような場面で強い。
役員向け・採用向け・社外向けなど、見せる相手によってトーンを変えたいときに、差し替えが一瞬でできる。
AIでページを作るとき、最大の問題は最初の方向性がぶれること。DESIGN.mdを選んで先に固定すれば、初稿の安定性が上がる。
複数事業・複数サービス・複数トーンを持つ組織にとって、こうした管理UIの価値はさらに大きくなる。
最初は「AIに渡しやすくしたい」という個人的な不便さから始まるかもしれない。しかし実際には、それ以上の価値が見えてくる。
| フェーズ | 価値 |
|---|---|
| 最初の価値 | 自分が使いやすい / AIに渡しやすい / 雰囲気を素早く変えられる |
| その先の価値 | ブランド資産の一元管理 / 社内共有 / 制作の初速向上 / デザイン指示の標準化 / 再利用可能な管理基盤 |
つまりこれは、個人用の便利ツールから、チームやプロジェクトをまたぐ管理ツールへ発展しうる構造を持っている。
DESIGN.mdの発想は強い。
テキストだけでは、使いにくい。
そのギャップを埋めるのが管理UIである。
見て、選んで、比較して、使える形にする。それがDESIGN.mdを本当の設計資産として機能させるための鍵になる。