副業で増やしたかったのは、お金よりも自由だった
副業を進めないと、と思う。AIの利用料も実験機材もただではないし、自由に触れる時間を増やすにはお金がほしい。ところが副業案件を入れた瞬間、その時間に一番やりたかったAIの実験ができなくなる。稼ぐ理由がAIで遊ぶことなのに、稼ぐ行為がAIで遊ぶ時間を削る。私は会話の途中でこの矛盾に気づいて、なんだか笑ってしまった。
その週、私が熱中していたのはローカルLLMだった。つい一週間前には仕組みをほとんど知らなかったのに、量子化やメモリの制約を調べ、どう動かすか試している。副業は進まない。だが、何もしていないわけでもない。「結局、そこで手に入れた金でAIを回して遊びたいだけでは?」。自分の目的を言い直すと、副業の優先順位も違って見えてきた。

Section 01 — 稼ぎたい理由は、お金そのものではなかった
私は会話の中で、「そこまでして金を手に入れてどうするのか」と口にした。もちろん生活にお金は必要だ。ここで話しているのは、空いた時間に何を増やしたいかである。私の場合、その答えはAIを触る時間だった。気になったモデルを試し、思いついた仕組みを作り、失敗した理由をまた調べる。その余白を作るために副業を考えていた。
お金が目的なら、時間を売ってでも収入を増やす選択は分かりやすい。だが、目的が時間なら話は変わる。お金を増やすほど自由になるとは限らない。収入のための作業が予定表を埋めたら、自由時間はむしろ減る。副業の金額だけを見ていた私は、先に自分の目的を数え直す必要があった。
Section 02 — 毎週、やりたい実験が山ほど出てくる
「毎週毎週、やりたいことが山のように出てくる」。当時の私の説明は大げさではなかったと思う。新しいAIの使い方を知ると、試す順番がすぐ増える。ローカルLLMを触れば、モデルの大きさ、メモリ、長い文章の扱い、普段の作業と同時に動かせるかが気になる。一つ答えが出ると、次の問いが生まれる。
だから副業が後回しになるのは、気合いだけの問題ではない。今週の空き時間には、すでに面白い実験が待っている。収益化の作業を入れるには、その実験を押しのけなければならない。締切があるなら仕事を優先するが、目的のない罪悪感だけで好きな時間を消すのも変だ。まず何と何を交換するのか、正確に見たい。
Section 03 — 一週間前まで知らなかった世界に入った
ローカルLLMの仕組みを一週間前までほとんど知らなかった、と私は言っている。それが会話の時点では、どのモデルをどんな環境で動かせそうか、使い道をどう切り分けるかまで考えていた。全部を理解したわけではない。むしろ分からないことが増えた。それでも、知らなかった選択肢が見えてくる感覚が楽しかった。
この楽しさは、記事や動画を眺めるだけとは少し違う。手元の制約にぶつかり、自分の使いたい作業へ引き寄せて考えるから、知識が実験と結びつく。将来モデルが変われば、当時の最適な設定は古くなるだろう。それでも、何を測り、どこで詰まったかを知る経験は残る。私が副業の時間に手に入れたかったのも、ある意味ではこの実験を続ける余裕だった。
Section 04 — 副業の利益から、失う時間を引く
副業の話は売上や手取りで比較しがちだ。しかし私には、実際に必要な時間が大きい。準備し、依頼を受け、作り、直し、連絡し、納品する。AIを使えば作業が速くなる部分はあっても、人間が決めることや待つことは残る。その時間が、いま一番やりたい実験と同じ夜や休日に重なる。
判断したいのは「儲かるか」だけではない。その副業で使った時間を、あとから本当に買い戻せるかだ。短い案件を積み重ねて入金が増えても、毎週の自由時間が消えるなら目的から離れる。逆に、最初に作る手間が大きくても、その後の運用が軽く、好きな時間を広げる可能性があるなら検討の余地はある。ただし後者も、勝手に収益が生まれると決めつけない。

Section 05 — 「あとで遊ぶ」は無期限延期になりやすい
まず稼いで、余裕ができたらAIで遊ぶ。順序としては立派に見える。でも、次の案件が来るたびに「あとで」を言えば、遊ぶ時期はいつまでも来ない。収入が増えても、それに伴う対応や期待が増えるかもしれない。私は、時間を作るために始めた副業が、時間を使い切る仕組みになることを怖がっていた。
これは副業を否定したい話ではない。収入が必要な時期には、好きな実験より確実な仕事を選ぶのは当然だ。私の会話では、その切迫した事情は出ていない。だから一般論として「副業などしなくていい」とは言えない。言えるのは、自分の目標が時間なら、使った時間まで含めて副業を評価しないと逆算が壊れる、ということだけだ。
Section 06 — 楽しい学びを、全部「投資」と呼ばない
私は、ローカルLLMの実験が「事前の勉強になっているのかな」とも話した。たしかに、調べたことや失敗はあとで役立つかもしれない。だが、それをすぐ「将来の収益につながる投資」と言い切ると、楽しい時間まで経済的な成果で正当化したくなる。投資のように数えるなら、何が残ったかを後で見ないといけない。
一方で、収益化の証明がなくても、面白いから続けることには価値がある。私は最後に「普通に楽しいからやっているだけ」と言った。ここが本音だろう。学びが偶然残るならうれしい。でも、好きで触っている時間を無理に事業計画へ変える必要はない。趣味として選び、そのうえで残った知識を使える場所があれば使う。その順番の方が、私には自然だった。
Section 07 — 収益を試すなら、小さく別枠で試す
とはいえ「楽しいから」だけを理由に、収益化の判断を永久に避けることもできる。そこは自分でも気にしていた。もし副業を本当に始めたいなら、AIの実験時間に混ぜ込まず、別枠で小さく検証した方がいい。どんな人の何を解決し、作るのにどれだけかかり、実際に関心を示す人がいるか。楽しい技術の探索と、売れるかどうかの確認は別の作業だ。
この切り分けは、夢を冷やすためではない。実験しているうちに「これも売れるかも」と思う瞬間はある。だが、面白いものを作れることと、お金を払う人がいることは同じではない。興味が湧いた時だけ、限定した時間で売り方を試す。反応がなければ戻る。副業を人生の主題にせず、必要な時に検証可能な選択肢として持っておきたい。

Section 08 — 仕事にするなら、時間の条件を先に決める
私がもし案件を受けるなら、金額の前に時間の条件を見たい。着手から終わりまで何回のやり取りがあるか。緊急連絡は来るか。修正の範囲は決まっているか。作業そのものはAIで短縮できても、細切れの連絡が休日へ何度も入れば、長い実験時間は取れなくなる。自由時間は合計時間だけでなく、まとまっていることにも意味がある。
だから「高単価ならよい」とも単純には言えない。望んでいるのは、いま考えたいことを途中で切らずに試せる時間だ。その時間を削る案件なら、金額を見てからではなく、受ける前に自分へ確認する。必要なら受ける。そうでなければ見送る。自分の目的がはっきりしていれば、儲かりそうな話への反応も少し落ち着く。
Section 09 — 恐竜図鑑を読む子どものように
会話の終盤、私は小学生のころ恐竜が好きで、図鑑を見て調べていた感覚を思い出した。ローカルLLMを触る今も、かなりそれに近い。試験のために暗記しているのではない。次は何が分かるか気になるから調べる。知らない名前を覚えたら、別のページも読みたくなる。学びが遊びの内側にある。
この状態は、無理に作ろうとしても続かないと思う。いま面白いと思えているなら、その時間をすぐ収益のために差し出すのは惜しい。もちろん興味は移るし、今の熱がずっと続く保証もない。だからこそ、熱のある時に試し、気づきを短く残す。恐竜図鑑を読む子どもへ、まず販売計画を立てろとは言わないだろう。
Section 10 — 一週間の終わりに、残ったものを見る
好きな実験を優先すると決めたら、何でも気分任せでいいわけでもない。週の終わりに、実際に触ったことを一つ振り返りたい。モデルを動かせたのか。想像より遅かったのか。どんな用途には使えそうで、どこは無理だったのか。新しく分かったことと、まだ未確認のことを分ける。それだけで翌週の実験がつながる。
この記録は「遊びも生産的でなければならない」というノルマにしたくない。面白かったという感想だけで終わる週があってもいい。ただ、せっかく分かった制約を毎回忘れるのはもったいない。短いメモがあれば、次に同じ壁へ当たった時に戻れる。副業へ変えなくても、遊びの質を上げるための記録にはなる。
Section 11 — 今は何を増やしたいのか
私は最後に「今週やりたいことをやっていく」と話した。副業を諦めた宣言ではない。いま増やしたいのは収入より、AIを試す時間と、自分が理解できる範囲だという確認である。別の月には事情が変わるだろう。その時はまた計算し直せばいい。目的が変わったのに、昔決めた副業方針だけを守る必要はない。
お金も時間も有限だから、何を選んでも別のものを少し諦める。ならば「副業が進んでいない」とだけ数えて焦るより、「何のために稼ぐつもりだったか」へ戻りたい。今の私には、試したいことがある。まずそれをやる。そのうえで、遊ぶ時間を本当に増やせる副業が見つかった時に、改めて仕事として考えればいい。