Implementation / AI Development2026.08.23
AI × Development Process
観測記録OBSERVATION RECORD / 900352C1RECORDED : 2026-08-23DOMAIN : IMPLEMENTATIONSTATUS : ARCHIVED

4日でWebサービスを作れた理由
AIが消したのは
職種間の調整コストだった

AIとCodexを使い、価格比較Webサービスを実質4日程度で構築した。商品データを持ち、楽天やYahooから価格を取得し、商品条件を照合する。価格履歴、検索、商品ページ、購入ガイド、自動テスト、公開処理もある。単純な一枚のホームページではない。それでも短期間で形になった。理由を「AIがコードを書いたから」だけで説明すると、本質を見失う。大きく減ったのは、従来なら複数の職種の間に発生していた説明、待ち時間、引き継ぎ、認識合わせだった。

AIと価格比較Webサービスの制作を表す記事のヒーロー画像
短期制作の速さは、コード生成だけでなく、判断から修正までの距離を短くすることで生まれる。

画面を作るだけでなく、データが正しくつながる必要がある

公開したサイトには、商品一覧だけでなく、商品マスター、検索条件、価格取得、商品照合、価格履歴、集計、記事、スマートフォン表示がある。商品名が似ていても、言語、商品種別、販売単位が違えば別商品として扱う。在庫切れや価格未取得も状態として分ける。画面を作るだけでなく、データが正しくつながる必要がある。分類としては、静的なホームページより、小規模なWebシステムとメディアを組み合わせたものに近い。

実作業だけでなく、説明する時間が発生する

通常の外注では、企画、要件定義、UI設計、フロントエンド、データ処理、テスト、記事制作、公開管理を分担する。分担には専門性の利点がある一方、役割の間で情報を渡す必要がある。企画意図を仕様へ変え、デザインを実装へ説明し、完成物を検収し、修正理由を再び伝える。実作業だけでなく、他の人が正しく動けるように説明する時間が発生する。

違和感を見つけた本人が、その場で修正を依頼できる

一人+AIの開発では、違和感を見つけた本人が、その場で修正を依頼できる。会議日程を調整し、チケットを作り、見積もりを待つ必要がない。修正後の画面を見て、さらに直す。この往復を一日に何度も行える。AIはコードを書く時間だけでなく、「次の担当者が着手するまでの時間」を消した。

完成像を短い往復で修正へ反映できる

今回、目的、優先順位、UIの違和感、商品条件、公開可否を同じ人が判断した。発注者と実装者の間で「なぜ必要なのか」を毎回説明し直さずに済む。頭の中にある完成像を、AIとの短い往復で修正へ反映できる。役割間の会議がなくなったことが、制作速度へ大きく効いた。

入口と出口の判断は残る

同じAIを使えば、誰でも同じ日数で作れるわけではない。何を作るか決める。商品データの不整合に気づく。画面の使いにくさを言語化する。規約上危ない処理を止める。完成報告をそのまま信じず、実物を確認する。AIが中間工程を埋めても、入口と出口の判断は残る。基礎知識と品質基準があるほど、修正回数を意味のある方向へ使える。

速く作れることと、正しく作れることは別である

トップページと商品ページで価格が違う。更新日がそろわない。似た商品を誤って最安値にする。スマートフォンで表示が崩れる。AI開発でも、こうした問題は起きる。短縮できた時間の一部を、データ整合性、リンク、表示、規約、例外処理の確認へ使う必要がある。

一作目で残るのは、完成したサイトだけではない

商品データの構造、API取得処理、照合ルール、デザイン、テスト、公開手順、失敗例が残る。次のサイトでは、これらを土台として使える。一度4日で作れたことより、次はさらに短く作れる仕組みが残ったことの方が大きい。

コードだけでなく、判断の理由を残す

短期制作を偶然で終わらせないために、次を保存する。

コードだけでなく、判断の理由を残す。そうすれば、別ジャンルへ横展開する時にも同じ品質基準を持ち込める。

AI開発の本当の速さは、
判断から実装までの距離を
短くすることで生まれる。

職種別の待ち行列へ渡さず、一つの判断ループで連続処理する

短期間で作れたと言うと、AIが数時間で完成品を吐き出したように見える。実際には、商品データ、外部API、価格履歴、商品照合、ガイド記事、テスト、公開作業など、複数種類の仕事があった。違ったのは、それらを職種別の待ち行列へ渡さず、一つの判断ループで連続処理できたことだ。

フェーズ従来発生しやすい受け渡しAI併用で短縮された部分人間に残った判断
要件整理企画書作成、仕様確認会話から仕様の草案を作る何を作らないか決める
データ設計調査、設計レビュースキーマ案と変換処理を作るデータ利用条件を確認する
UI実装デザインから実装へ受け渡し画面案とコードを同じ場で修正情報の優先順位を決める
外部連携API調査、担当間の確認公式文書を基に接続部分を作る規約と欠損時の扱いを決める
コンテンツテーマ選定、執筆、入稿構成と下書きを並行作成事実、経験、表現を確認する
テスト実装完了後にQAへ依頼作業途中から検査を繰り返す公開可能か最終判断する
公開手順書、環境差の調整設定と確認項目を整理する本番影響と戻し方を確認する

大きく削られたのは、手を動かす時間だけではない。「仕様を説明する」「担当者が空くまで待つ」「戻ってきた成果物の意図を再説明する」という調整時間である。企画者と実装者が同じ人で、AIがその場で草案を作ると、判断から修正までの距離が極端に短くなる。

一方で、四日という日数だけを切り取って再現しようとしてはいけない。扱う技術の基礎理解、過去に作った部品、明確な対象範囲、外部サービスの状態が揃っていたから成立した。未知の規制領域、大規模な個人情報、決済、複雑な権限管理が入れば、同じ速度を優先すべきではない。

量産速度ではなく、意味の検査をボトルネックとして意識する

AI開発では、速くできる工程と、時間をかけるべき工程を分ける必要がある。

圧縮しやすい仕事

  • 既知のパターンを使った画面や処理の草案。
  • 同じ形式のデータ変換や検査コード。
  • 仕様からテスト観点を広げる作業。
  • 定型的な説明文、メタデータ、運用手順の下書き。
  • エラー内容の整理と修正候補の列挙。

人間の確認を短縮してはいけない仕事

  • 外部APIやコンテンツの利用条件。
  • 同一商品かどうか、数値が現実と合うかという意味判断。
  • 秘密情報、権限、削除、課金、公開の安全性。
  • 誤情報が利用者へ与える影響。
  • サービスとして何を約束し、何を約束しないか。

AIがテストコードを書いても、検査対象が正しいとは限らない。画面が表示されても、価格比較の計算母集団が間違っていれば価値はない。ガイド記事が24本あっても、同じ説明を水増ししただけなら独自性は生まれない。量産速度ではなく、意味の検査をボトルネックとして意識する。

私は、変更のたびに最低限、主要導線、データ欠損、外部リンク、スマホ表示、秘密情報、戻し方を確認するようにした。短期開発の品質は、最後に長時間テストすることより、小さな変更ごとに壊れていないことを確かめる方が守りやすい。

速さを偶然ではなく改善可能な制作手順へ変える

四日で作った経験を一度の武勇伝にしないため、次の制作へ残すものを決める。

01
要件テンプレート読者、主要価値、扱わない範囲、外部依存、公開条件を一枚にする。
02
データ境界外部APIごとの取得、保存、表示、欠損の扱いを部品化する。
03
画面部品カード、比較表、検索、エラー表示、更新日時などを再利用できる形にする。
04
検査項目リンク、画像、メタ情報、モバイル、秘密情報、長文一致を自動と手動に分ける。
05
判断ログ採用しなかった案と、その理由を残す。
06
公開手順バックアップ、反映、確認、切り戻しを順番で残す。
07
運用記録公開後に何時間かかったかを残し、制作速度だけで評価しない。

二作目が速くなる理由は、AIの性能向上だけではない。一作目で得た失敗、設計境界、検査項目を再利用できるからである。逆に、完成したコードだけを残し、なぜその設計にしたかを捨てると、次回も同じ確認をやり直す。

短期開発の本当の成果は、四日で一つ公開したことだけではない。「企画から公開までのどこに待ち時間があり、どの判断は人間に残すべきか」という制作システムを手に入れたことだ。AIが強くなるほど、この制作システムの差が、そのまま次の速度と品質の差になる。

四日間の後に、本当のコストが見える

公開までの速さだけを測ると、短期開発は成功に見えやすい。だが、外部APIの変更、商品データの欠損、検索流入の確認、記事の更新、問い合わせ対応は公開後に始まる。四日で作れても、その後に毎週十時間の手作業が必要なら、制作コストを運用へ移しただけである。

そのため、公開した週から修正時間を記録する。何が自動で回り、何を人間が確認し、どの障害が繰り返されたかを分類する。三回以上同じ確認が発生したら検査へ組み込み、判断が必要なものは手順と責任者を残す。短期開発の評価は、公開日だけでなく、一か月後に保守可能かまで含めて行う。

利用者の反応も、制作中の想像とは異なる。力を入れた比較機能より基礎ガイドが読まれる、想定していなかった検索語から来る、スマホでは重要な項目が見つけにくい、といったずれが出る。ここで機能を増やす前に、実際に使われた導線を直す。四日で公開できた利点は、完成を誇ることではなく、現実のデータへ早く到達できることにある。

一人開発でも、役割は頭の中で分ける

企画、実装、品質確認を一人で行うと、認識合わせは減るが、自分の思い込みを指摘する人も減る。そこで、同じ人が作業していても時間と観点を分ける。実装直後には公開判断をせず、翌日に利用者の導線だけを見る。AIにも、実装を手伝った会話とは別に、壊し方、誤解しやすい表示、規約上の懸念を探させる。

また、AIの出力を複数同時に進めると、レビュー待ちが積み上がる。画面、記事、テスト、設定が一斉に戻ってきても、人間が意味を確認できなければ完成ではない。一日の終わりに未確認の成果物を数え、翌日に処理できる数を超えたら新規生成を止める。この制限が、短期開発で品質を落とさないためのブレーキになる。

四日という速度は、すべての案件へ適用する目標ではない。小さな対象、戻せる変更、確認可能なデータ、再利用部品が揃ったときに初めて意味を持つ。条件を無視して日数だけをまねると、未確認の負債が後へ残る。

次に同じ速度を再現したいなら、作業時間だけでなく、迷った判断、待ち時間、手戻りの原因を記録する。AIが短縮した工程と、人間の確認で品質を守った工程を分けて残すことで、速さを偶然ではなく改善可能な制作手順へ変えられる。

まとめ

AIが消したのは、
コードだけではない。
職種間の調整コストである。